【感動ネタバレ】映画「国宝」観客が確実にイラっと来たシーン、もう観る気になれない理由について。

映画

吉沢 亮と横浜流星――二人の「顔面国宝」(国宝級イケメン)が見れるんだから、ファンは見ていて楽しいだろうねぇ。どちらも大河ドラマの主演を務めていて「格」は十分。ナベケン(渡辺 謙)さんも、たなみん(田中 泯)も出るんでしょ。原作の国宝(著・吉田修一)はとても面白かったから、脚本も普通にいけば面白くなるだろうね。ただ、あのスケール感とリアリティが出せるかどうか…。まあ、映画サイトの評判も良さそうだし、観にいってみよう…そう、映画「国宝」のことである。

観客が集中しすぎて映画館から音が消えた…

というわけで、TOHOシネマズ 渋谷で鑑賞。いつもと違っていたのが、観客が異常なまでに集中していたことだ。あまりにも音がしないから、えっ、みんな息してる? と思ったほど。とはいえ、想像を超えるびっくりシーンの連続で、観客が目が離せないのは仕方ない。オレは原作を読んでたからいいけど、初見の人は驚くだろうな…そんなポイントが5個くらいはあった。冒頭のカチコミシーンもそうだし、花井半二郎(演・渡辺 謙)が血を吐くシーンもそう。これは、次の展開も目が離せない…となる。あとは、登場人物が終始危ういよね。立花喜久雄(演・吉沢 亮)もそうだし、花井半弥こと俊介(演・横浜流星)もそう。いまにも命を落としそうで…こっちもハラハラしながら見守るしかない。

印象的なシーンも目白押しだ。たとえばホテルの宴会で、喜久雄が誘惑の目線を送った客が急に目の前に立つシーン。あれは怖いって! それと、人間国宝・小野川万菊(演・田中 泯)の存在感が際立っていた。万菊の顔のどアップも多くて、うわ~しわくちゃだな…と思いつつ、なぜか見入ってしまうのだ。あとは、情事の際の喜久雄のふくろうの刺青がまた、色っぽいのよね~。

【原作を読みたい方はこちら】

国宝 (上) 青春篇 (朝日文庫)

国宝 (下) 花道篇 (朝日文庫)

役者たちを狂わす舞台の魅力

…しかし、芸道ってのは、ここまで壮絶なものかね。何だろう、あの執念…。死を目前にして舞台にしがみつく花井半二郎しかり、俊ぼんしかり。万菊も、最後は抜け殻のようになって、2畳ほどの簡易宿泊所(いわゆるドヤ)で死期を迎えるわけで(部屋に日本人形だけあったのが不気味…) 。

喜久雄もまた、「日本一の役者にしてください。ほかにはなんにもいりません」と神に願うシーンがあるが、「ほかは何にもいりません」だからね!? しかも、それを自分の子どもに向かって言う? 「子どもすらいらない」って言ってるんだよ。あの透明な表情で…そこにまた、危うさを感じてしまう。

役者たちは、なぜそこまでするのか。舞台の上には、それだけ抗いがたい魅力があるのだろう。「見たい景色がある」と喜久雄が説明していたが、その魅力の象徴が、要所で出てくるキラキラのシーンだ。あの景色を見たいがために、愛情のない吾妻彰子(演・森七菜)を誘惑してまで、ドサ回りで屈辱にまみれた生活を続けても、舞台に立ちたいと思ったわけだ。キラキラは「ずっと上から見ている存在」が見せる祝儀みたいなものか。それはまさに、選ばれた者しか見えない景色。そんな景色、見てみたいよなぁ…。

「アンタ、わかってねえよ!」怒りを覚えた記者のセリフ

さておき、いよいよ物語は終盤へ。原作のシメはかなり特殊だったので、映画ではどう描くのか、個人的には注目していた。老年に差し掛かった喜久雄は、「日本一の役者にしてください」との願いを成就させ、人間国宝の認定を受ける。おそらくは、普通の幸せと引き換えに。その流れで、観客のほぼ全員がイラっとした(であろう)部分がある。雑誌か新聞記者が、喜久雄に対して取材を行い、「ここまで順風満帆な芸道だったわけですが」と語りかけたとき。観客はこう思ったはずだ。「順風満帆」…だと? 一体どこが? 親父を殺されて、師匠と相棒を失って、干されて、屈辱の底を這い回った人生を「順風満帆」って…。ジャーナリストなのに、何を調べてきたんだ! わかってねえ! アンタ、何にもわかってねえよ!

同じ取材で、やけにカメラマンの距離が近いな…と思っていたら、カメラマンが成長した娘の綾乃だと判明。「お父ちゃんはひどい人だし、恨んでいるけど、お父ちゃんの芝居を見ると、これからも頑張ろうって思えるんよ」といった言葉を送る。

映画ではこのセリフが喜久雄の人生を肯定することで、観客にとって(喜久雄にとってではない)大きな救いとなっている。なお、この一連の取材シーンは原作にはない。原作では喜久雄の現実離れしたシーンで終わるのだが、それだとリアリティを損ない、観客の気持ちにも区切りがつかない可能性がある。なるほどこうきたか、と感心した。そして、舞台上で単独で舞うシーンを経て、「ああ、ええ景色や…」で終幕。喜久雄の充足感が伝わってきて、ああ、よく生きた。満足だ、と思った。当人になって、役者人生の走馬灯を見た気分だ。

…しかし、余韻の長い映画だね。観てから2週間以上経ったいまでも、映画のワンシーンがフラッシュバックして、そのたびに、すごかったなぁ~と、噛みしめてしまう。確かに、観客が息を忘れて感情移入するだけの「力」があった。では、もう1回観たいか? と問われたら、オレは遠慮するだろう。もうおなか一杯。あんな濃い~人生は、一度体験すれば十分だ。それほど、圧倒的な作品だった。

【原作を読みたい方はこちら】

国宝 (上) 青春篇 (朝日文庫)

国宝 (下) 花道篇 (朝日文庫)

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