
「ずっとこれでいい」。人は、そんな存在をいくつ持っているだろうか。自分の場合、メガネでいえばJINSのオーバル型メガネ。ボールペンでいえばuniのパワータンク。それとApple Watchだ。腕時計マウントバトルの螺旋から外れつつ、そこそこオシャレで先進的に見える意味で、大きな意義を持っていた。
一方、グルメではどうか。こちらは胸を張ってこれ、というモノはなかったが、つい最近、日本酒で見つけてしまった。それが、「日高見(ひたかみ)超辛口 純米酒」。宮城県石巻市・平孝(ひらこう)酒造が造る銘柄である。
自慢ではないが、筆者は日本酒にうるさい
実をいうと、私はそこそこ日本酒にうるさい。23年ほど前、私は和食居酒屋で日本酒の仕入れを担当して以来、日本酒を継続して追ってきた。自慢は、伝説の杜氏・農口尚彦氏にお会いしたことと、有名になる前の獺祭の蔵を訪れて蔵元の桜井博志さんとお話ししたこと。SAKE COMPETITIONの審査会場で中田英寿さんを横目に見ながら、スター蔵元の廣木健司さん(銘柄:飛露喜)を取材したこともある。思い入れが大きいゆえに、「ポン酒」と呼ぶリスペクトのないヤツは許せないし、おいしくない酒を選んでしまう人を見ると、残念すぎて嫌悪すら感じる。つまり、めんどくさいヤツなのだ。
そんな私が酒屋に行くと、「これは燗に向いてないし、食事に合わない。これは酒質が粗いし、これは水っぽい。これは高いし…」と迷うことになる。記憶を呼び起こし、新たなインプットを行うためにも迷うのは必要な工程なのだが、ときに面倒だなぁ~と思うことも。絶大な信頼がおける、オールマイティな1本はないものか…。
辛口かぁ…と思っていてごめんなさい
そこである日、地元の酒屋でこの「日高見 超辛口 純米酒」を手に取った。目にする機会は多いものの、いままで飲もうとは思わなかった。辛口、辛口かぁ…辛口ね…。個人的には、辛口を前面に押し出す銘柄には抵抗がある。どうも、日本酒らしいふくらみのある味わいに欠け、物足りないイメージがあるのだ。しかし、本品を飲んでその先入観は覆され、こう思った。「ずっとこれでいいじゃん」と。
その魅力は、とにかくクリアな酒質にある。イヤな要素が何もないのだ。私は、無意識にいままで飲んだ日本酒のあざとさや不快な臭いを覚えていて、ついつい酒質のなかに探してしまうクセがある。しかし、この酒にはそんなイヤな要素がまったくない。雑味がなくボディは軽快。それでいて芯にはしっかり米の味わいが感じられる。香りはほのかに香る程度で、青いバナナのようなフレッシュな果実のイメージ。その点、昔ながらの辛口とは違い、現代的なのが好みに合う。全体のバランスも完璧…素晴らしい。
本品のイメージを例えるなら、涼やかな和の美人だろう。年齢は若さと成熟が同居する30代か。相貌に突出したものはないものの恐ろしく整っていて、美しい所作からは絶え間ない自律の精神が見てとれる。内面は冷たいのか? というとそんなことはなく、笑顔が柔らかでずっとそばにいたい温かさもあって…うん、なんだこの妄想。
燗は抜群。食事を邪魔せず、引き立てる
ちなみに、燗も抜群にウマい。温めるとさらに口当たりがやわらかくなり、日本酒らしい蜜のようなエキスが前に出てきて、思わず「うまぁ」と笑顔になる。ボディが弱い日本酒だと、燗にすると味が吹っ飛んで舌にピリピリくるものだが、温めても変わらず、完璧なバランスを保ったままなのだ。
食事を邪魔せず、引き立ててくれるのも実にいい。蔵元は地元・石巻で捕れる魚に合う酒を目指して、銘柄のキャッチコピーを「魚でやるなら日高見だっちゃ」としたそうで、言葉の通り、寿司と合わせて文句なし。あと、燗を温かい鍋や煮物と合わせると、本当にほっこりするんだよなぁ~。
穏やかな香り、ほどよいボディで料理を邪魔せず受け止めてくれるから、料理人にも好まれる味じゃあなかろうか。価格のほうは、1.8Lで2750円、720mlで1375円(ともに税込)。決して安くはないが、この味と使いやすさを考えると、トップレベルのコスパといえる。

四季の食材と合わせたら…? 思わず想像がふくらむ酒だった
酒質はクリアで軽快。香りは控えめながら現代的で、食事によく合う。燗は抜群にウマい。お値段もお手頃…というわけで、ドはまりしてしまった。上品な味わいで見た目もそれなりに高級感があるから、贈り物にしても喜ばれるだろう。
いや~これはいい酒を見つけた。冬の燗もいいが、夏はキリっと冷やして夏野菜や冷奴と合わせてもうまそうだ。ああ、春の山菜や秋のサンマと合わせたらどうだろう…。長く付き合っていきたいと思うからこそ、思わず想像がふくらんでしまう。日高見はそんな酒だった。
●日本酒データ(2025年1月時点)

銘柄:日高見 超辛口 純米酒
蔵元:宮城県平孝酒造
分類:純米酒
酒米:ひとめぼれ
精米歩合:60%
日本酒度:+11
アルコール度:15%
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