オレも中年となったからには、親が生きているうちに親孝行しないとな…というわけで、「花仙庵 仙仁温泉 岩の湯」(かせんあん せにおんせん いわのゆ)に両親を連れていくことにした。ここはとにかくリピーターが多く、「予約の取れない温泉旅館」として有名。なんと予約は11か月待ちだという。
仙仁温泉の予約方法は電話のみ
ちなみに、仙仁温泉がある長野県の須坂市はオレの実家に割と近い。ただ、予約が取れないので、目と鼻の先であっても、行く機会はなかったわけだ。今回は姉夫婦も一緒に誘い、オレと両親を含めた5人で予約を試みる。
仙仁温泉の予約受付は毎月の1日、朝8時にスタート。予約手段は電話(026-245-2453)のみ。そして、宿泊予約できるのは11か月後の日程なので、筆者の場合は翌年3月に予約を入れるため、前年の4月1日、朝8時に電話した。運よくつながって無事、一発で離れの5人部屋の予約を取ることに成功!予約時に聞いた一人あたりの宿泊費は3万7000円台だったと思う。
そして11か月の時が流れ、予約の記憶も薄れた3月のある日、いよいよその時が訪れた。
パブリックスペースの探検が楽しい!
実家のクルマで仙仁温泉に到着! 現地では姉夫婦も合流。ウェルカムドリンクを頂いたのち、離れのひとつ「仙楽」という部屋へ通された。写真を撮り忘れたが、広々としていてぬくもりのある調度がいい。
部屋で荷をほどいたら、さっそく館内探検へ。以前、旅行専門誌の元編集長から「仙仁温泉はパブリックスペースが充実している」と聞いたことがあるが、なるほど…と納得した。イスが置かれ、自然と滞在したくなる小スペースが、館内のいたるところに点在しているのだ。
たとえば、ロッキングチェアに揺られながら、ガラス越しに深い緑が望める部屋。革張りのイスが置かれた読書スペース。重厚なソファが置かれた客間風の空間。ハンモックのあるサンルームなど。仮に、いずれかを切り取って喫茶店として開業したら、絶大な人気を集めることだろう。それほどの魅力があると感じた。
こうした小スペース、「秘密基地に来た!」みたいなワクワク感を喚起するので、探索が楽しい。外への扉を開けた意外なところにレストスペースがあったり、山道を登った先にもベンチが置かれていたりすることも。
子どもは飽きることがないだろうし、大人はこれらの空間で読書するなど、ゆっくり過ごすのもいいだろう。リモートワークをするにも最適だし、雨の日や雪の日なんかも、間違いなく風情があるだろうなあ。
山の幸を盛り込んだ充実の夕食
仙仁温泉は洞窟風呂も有名だ(※写真撮れずすみません)。湯がぬるいので、家族がゆっくり語らうのにいいらしい。夕食前に行ってみたら、父と遭遇。ちょっと語ろうかと思ったけど、そんなに話すことがないな…。ひとこと、ふたこと言葉を交わして去る。
さて、お楽しみの夕食はというと、どれも手が込んでいて見た目も美しく、充実した内容。
ただし、川魚や山菜など地元の食材をふんだんに使っていたため、同じ地域で生活する両親には目新しさが感じられなかったようだ。父は「マグロが食べたい」とかいう始末で、なんだかテンションが下がっている(笑)。おいおい…と思うけど、正直な感想が面白くて、のちの語り草となりそうだ。一応フォローしておくけど、料理はとても美味しいので、普通の人なら間違いなく満足するはず。
貸切風呂に大興奮!
翌朝は6時ごろに目が覚めてしまった。どれ、昨日見かけた貸切風呂(個室風呂)へ行ってみるか。仙仁温泉の貸切風呂は家族風呂を含めて全部で4つ。予約不要で早いもの勝ちなので、中へ入って施錠すればあとは好きに使える。なお、入浴中であることはランプで外部に表示されるので、扉をガチャガチャされることはない。
「野守の湯」は、まず入って感動。何コレ、脱衣所の木のぬくもりハンパない! そして何なの、この奥行きは!
え、ウソ、内風呂と露天風呂があるの? しかも内風呂はジャグジー機能付き。窓を開け放って森の爽やかな空気を取り入れ、ジャグジーをONにすると…フォォォォー! 最高! しかもそれを一人じめですよ。何という快感、何という贅沢か…まさにゴイスー、ゴイゴイスー! 普通の貸切風呂のレベルじゃないね。
いったん興奮を冷まして、次の貸切風呂「夢想の湯」へ。ここも湯船は露天風呂を含めて2つ。おお、ここは高台にあるから見晴らしがいいな。
続いて「風姿の湯」へ。ここは露天風呂が面白い。浅くて細長い湯船があり、湯に浸かりながらあお向けになって空を眺めることができる(写真がなくてすみません)。ここは姉夫婦が深夜に訪れたところ、星空がキレイに見えたそうだ。へぇ、それもいいね。
こうして、筆者は家族風呂を除く3つの貸切風呂を堪能。どれも素晴らしかったなぁ。のちに両親に語ったところ、貸切風呂はひとつも行かなかったそう。ああ、うちの親ってそういう残念なところ、あるんだよなぁ。同じ対価でよりよいモノがあるのを知らず、いらんモノばかり手に取っちゃう、みたいな…。
というわけで、皆さんが仙仁温泉を訪れた際は、絶対に貸切風呂を訪れてほしい。深夜や早朝、チェックイン直後に行くなど、ピークタイムを外して楽しむのがオススメだ。
仙仁温泉はなぜ心地いいのか?
ちなみに、仙仁温泉は風呂やパブリックスペース、廊下に至るまで、ぬくもりや心地よさを感じる。それはなぜか? ひとつの法則を発見した。それは、必ず照明と植物をセットにして置いていること。本稿の写真を見返してもらえばわかるが、脱衣所や湯船ですらその法則にのっとっているのがわかる。
あとは、これに光沢のある調度品や木材、磨きこまれたガラス、鏡などを組み合わせることもある。館内の要所ではクラシック音楽を流していることも。
そういえば以前、高名なインテリアスタイリストの方が、インテリアコーディネートのコツの一つとして、「空間を漂うものを重視すべき」と教えてくれた。空間を漂うものとはすなわち、「光」「音」「香り」。これらを整えれば、自ずと心地よい空間になる。
そして、仙仁温泉はそれを実践していて、なかでも「光」を重視していると感じた。「光」は植物に反射したり、植物に透けたりするときが最も美しく見えるからね。同様に、ガラスや鏡、調度品も光を美しく反射するから、意識して配置しているのだろう。
うーん、我ながら深い考察…。皆さんも仙仁温泉を訪れた際は、ぜひ「光」に注目してほしい。
一人あたり約4万円の料金は「高い」とは感じなかった
さて、楽しかった時間はあっという間に過ぎ、チェックアウトを迎える。会計は夕食時に注文した酒の代金を含めて5人で約20万円(一人あたり約4万円)だった。もちろん、4万円という料金は一般的な宿泊費としては高いが、満足度からすれば高くはない。つまり、コスパは高いと思った。総じて、「ワクワク感が大きい、記憶に残る宿」という印象。初めて自分で計画して両親を連れていった宿であり、その点でも思い出深い。強いて難点を挙げるとすれば、夕食時にオーダーしたお酒の提供が遅かったくらいか。
今後、満足度がイマイチだった(笑)両親とともに行くことはもうないだろうが、オレ個人としてはまた行きたいと思っている。新緑や紅葉の季節、雪の季節に訪れて、四季折々の表情の変化も見てみたい。
予約から宿泊まで11か月待つ必要はあるが、「11か月ワクワクできる」と考えることもできる。個人的にオススメの宿なのは間違いないが、果たして皆さんはどう感じるか…。夕食で、マグロが食べたいと思うのか(笑)。大切な人を伴って、ぜひご自身で体験してみてほしい。
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